不眠症彼女ちゃんとコーヒー彼氏くん

1/7
前へ
/7ページ
次へ

不眠症彼女ちゃんとコーヒー彼氏くん

「どうしたの、また眠れない?」 彼はドアを開けて微笑んだ。月明かりにピアスが光る。私の返事を待たずに、狭い玄関に迎え入れる。 「ううん、別に」 今日は眠れなかったわけじゃない。恐らく、睡眠薬でも飲めばすんなり眠りにつけただろう。 「珍しいね、眠れないわけでもないのに、わざわざ俺の所まで来るなんて」 「何となく」 何となくか、と少し寂しげに笑う彼。 「ココアでいい?」 「うん。ありがとう」 「いーえ」 居間のちゃぶ台の前に私を残して、彼は台所へ向かう。 今日も、彼のアパートは台所の電気しかついていない。でも暖房はちゃんと効いていて、外とは大違いの暖かさだった。出掛けに羽織ってきたコートを脱いで脇に置く。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加