日のあたらない場所でも良い

10/13
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「ヒナちゃんあっという間に売れっ子になっちゃってさぁ。……俺以外の男とイチャついてんじゃねーよ!」  盛口(もりぐち)さんの手にはキラリと光る何かが握られていた。 あっ! と思った時にはもう遅かった。盛口(もりぐち)さんの握っていたものが私を庇った竜次(ゴツイおとこ)の腕に突き刺さる瞬間を、目の前で見ていたのに止められなかった。 光る何かがすっかり埋め込まれた場所からは、間髪を容れずに血が流れ落ちてきて――「キャーッ!」とか「止めて!」とかパニックになった私は叫んでいたと思う。  光る何かは小さな果物ナイフだった。その突き刺さった果物ナイフを乱暴に引き抜いた竜次(ゴツイおとこ)は、私の体に触れようとする盛口(もりぐち)さんともみ合いになって――。 近所の人の110番で警官が駆けつけた時には、腕から血を流しながらも立つ竜次(ゴツイおとこ)と、アパートの前の道路にうずくまる盛口(もりぐち)さんの姿。 そして、竜次(ゴツイおとこ)の手には血で濡れきった果物ナイフが握られていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!