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わーーーーっ。
複数の大声。
耳に障る。
歓声とは違う。
微妙な声。
喜んでいるのではない。
しかし悲しんだり怒ったりもしていない。
驚きと恐れと、興奮が入り混じった声。
俺の耳に刺さってくる。
また塩ビ管を覗く。
ガキ共。
小学生のガキ共。
遮断機が上がって、駆け抜けて来る。
二十人くらいの集団。
我先にと走って来る。
叫び声を上げて。
何かから逃げるように。
中には後ろを心配そうに見る女子もいる。
そこに一人残されている。
踏切の向こう側。
取り残されている。
やせっぽち。
やせっぽちで半袖。
もう11月なのに、半袖の男子。
日本人じゃないのか。
外人か。
ブラジル人か何かか。
見上げている。
上がっていく遮断機の棒。
その先。
何かがぶら下がっている。
袋。
布の袋。
給食袋か。
棒が上がって、一番上まで行ってしまった。
見上げている。
半袖男子。
やせっぽち男子。
手が届かない。
遮断機が下りなければ取れない。
ひどいことをする。
踏切のこちら側。
デカい男子。
赤いダウンのジャンパー。
ドヤ顔。
すごいね。さすがだね。やばいね。
周りの背の低い男子達が口々に。
デカい男子に羨望の眼差しを送る。
更にドヤ顔のデカい男子。
行ってしまう。
羨望の眼差しを引き連れて。
集団が去っていく。
残されたやせっぽち。
踏切の向こう側で。
高く上がった給食袋を見上げている。
ただ見上げている。
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