踏切穴の雄一

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 うわーーーーーっ。  複数の叫び声。  驚きと恐れと、興奮が入り混じっている。  俺は努力を諦め、塩ビ管を覗く。  小学生の集団。  またあのデカい赤いジャンパーの奴だ。  デカいのが中央にいる。  踏切の中央にいる。  皆から囲まれている。  少し遅れてやせっぽち。  今日も半袖のやせっぽち。  デカいのが何かを掲げている。  袋。  給食袋。  やせっぽちの給食袋か。  投げた。  線路上に投げた。  同じだ。  柳原と同じだ。  あのデカいの。  柳原じゃないか。  奴は。  柳原じゃないか。  もう見れなかった。  足が震え出したからだ。  ガタガタガタガタ。  俺は足を押さえつける。  震え。  痙攣。  止まらない。  カン、カン、カン、カン、  踏切が鳴り出す。  電車が来る。  下り電車が来る。  やせっぽち。  轢かれるぞ。  大丈夫か。  大丈夫なのか。  来る。  電車が来る。  来た。  電車。  通り過ぎる。  通り過ぎる。
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