さよならさん

　手を振られたら死ぬって、あいまいな噂だなと思いつつよくある内容なので一体誰が流した噂なのだろうとだけ思った。怖い噂ならもっと信ぴょう性のあるものにすればいいのに。ネット情報であふれているのだからそういう機械を使った怪談のほうが盛り上がりそうだ。
　「聞いたことない、全然。あんまりにもあいまいすぎない？」
　怖い噂つまり学校の怪談なら小学生の時からあった。ハナエのように怪談が好きな子は高学年や先生にまで聞いて回り、すべての怪談を知ろうとしていた。それを私は「よくやるよ」という少し馬鹿にした気持ちで見ていたのをよく覚えている。
　高校生にもなってまだ怪談というものが存在していることには驚く。
　「あいまい？充分だと思うけどな。たださようならって手を振られたら死ぬ。病気とか事故とかそういうの」
　「ふーん。絶対に嘘だよねそれって。現に死んでる人いるの？」
　馬鹿にした気持ちを押さえていたが声色は返ることができなかった。どうしても興味の無さが滲んだ色のない声になる。どうでもいい会話の時はどうしてもこうなってしまう。
　どうせそんなことで死んだ人なんていないだろうと高をくくっていたのだが、ハナエは表情を曇らせて教室には私たち二人しかいないのに声をひそめた。
　「それがうちの学校の二年生が一人死んだの。いきなり」
　「まさか偶然でしょう」