さよならさん

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 私は即答した。どうでもいいと思っていた感情はその一言でひきつけられた。二年生が死んだなんて話は初めて聞く。同じ学校なら全校集会などで話されると思うが聞いたことはない。  「まずそのさよならさんって人の手を振られたなんてどうやってわかるのよ。わからないでしょう?証拠もないのに」  もっともなことを言ったがハナエは好奇心を必死に隠して気の毒な様子を装いながら言った。 「それがその先輩死ぬ前日に知らない子に自転車で転んでいるところを助けられてその後にバイバイって手を振ったんだって。そしてらその子もバイバイって手を振ってさ、額?だったかな血が出てたらしいから声かけてもらってなんだか助かったって友達に話していたんだって」  「その子って男の子なの?」  「うーんそこまでは話してなかったみたい。でもその話をした次の日にトラックにはねられて死んだらしいの。もうびっくりよね、本当に」  「なんだか偶然にしか思えないけどなぁ」  学生の事故など全国で考えたら珍しいものではない気はする。気の毒ではあるけどそこまで特別感はない。  「だから二年生の間では一気に噂が広まってね。今はあまりさようならって手を振らないみたいよ。さよならさんの性別もわからないから避けようがないしね」     
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