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ハナエは話終わってからずいぶん満足しているようだった。さよならさんの話のネタは尽きたようだがまだこれから何かがあるのではないかと期待しているのように目が輝いている。
自分の身にその怪談がやってくるかもしれないというのは考えないのだろうか、と思ったが角が立つ気がしたので言わないことにした。
私にとってはどうでもいいことだ。そして関係のないことだ。嘘に決まっているし偶然だ。誰かが面白がって流しているただの噂に違いない。
「あ、もう五時になるじゃん。早く帰ろう」
話を切り上げたかったので大げさにそう言って時計を見た。ハナエもつられて時計を見ると「わ、本当だ。今日バイト入れてるのに」と言って急いで立ち上がる。
お互いにカバンを持っていそいそと教室を後にした。
私の中ではその日にその怪談は終わっていた。ただの怖い噂。本当かなんて調べようがないのだからと忘てしまう内容だった。
だが一週間後。私はその怖い噂について嫌でも考えなければいけなくなる出来事が起こった。
その日私は数学の宿題に不備があって放課後に教室で問題を解いていた。どうしてか一問だけ解き忘れていたのだ。いつもならしないのにどこかぼーっとしていた自分がいたようだ。
「珍しいねぇ。問題を一つ飛ばすなんて」
「うん、本当。ぬかりなさそうなのにね」
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