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乱暴な運転でいつもとは違う道を走っているお父さんに、僕は問いかけた。
「どこへ行くの?」
お父さんは答えた。
「どこか遠い所だ」
「お母さんはどうするの」
「知らねぇよ、あんなバカ女」
僕はバックミラー越しにお父さんの顔を見やった。
鬼のような形相をしていた。
(逃げなきゃ・・・)
そう直感した僕が窓の外を見やると、車は高速道路に入ろうとしていた。
どうしよう。高速道路で走り続けられると、逃げるチャンスを失ってしまう。
まだインターチェンジの前にいる今のうちに車から飛び出してでも、逃げないと・・・。
そうして、車のドアノブに手をかけようとしたところで、
お父さんが無表情に言った。
「逃げんじゃねぇぞ。もし逃げたら、どこまででもお前を追いかけて行って、
ぶち殺してやるからな」
(逃げられない・・・)
僕は、怖くて体が動かなくなった。
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