白き城

8/30
前へ
/30ページ
次へ
トラックはそれからしばらく高速道路を走り続けた。 先ほどとは違いゴーッというトラック特有のエンジン音が耳に飛び込んでくる。 惨めったらしいさっきまでの僕の気持ちも、幾分かましなものに変わっていた。 「お前、名前は?」トラックの主が訊いてくる。 「黒岩 隆です」僕は答えた。 「そうか、たかしっていうのか。俺は飯島だ。これから、どうする?」 「え・・・?」 「だって、誘拐されていたんだろ?だったら、家に帰るか、それとも警察に行くかだ」 「そ、それはそうだけど・・・」 家に帰ったら、またお母さんの死体を見なければいけないし、それに 下手をすればお父さんに見つかって、殺されてしまうかもしれない。 僕は選択肢を一つしか考えられなかった。 「警察に行きます」 僕がそう言うと、飯島さんは笑って答えた。 「そうか。じゃあ、途中で警察に寄ってやるよ」 僕はホッと胸をなでおろした。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加