霜降る

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霜降る

 霜が降った、という言葉は、おばの見舞いを終え、帰宅して母に報告したときに知った。  私は久しぶりに会ったおばの様子に衝撃を受け、制服を着替えるのももどかしく、 「おばさんの髪、真っ白な雪みたいだった」  と早口でまくしたてた。  パートの帰りにスーパーによって帰ってきた母は、スーパーのレジ袋から食材を冷蔵庫にしまいながら、「ああ」と頷いた。 「一晩にして、真っ白になったらしいの」 「一晩で?」  そんなことがあるのだろうか。私は驚いて目を見開いた。  万紗子おばは父の姉だ。私は五歳のころに会ったっきりだった。つまり、会ったのは十二年ぶりということになる。  幼少のころに会ったおばは、記憶はおぼろげながら、黒髪の美しい人だった。父より四歳年上で、随分な美人だと思ったものだ。  夕飯の支度を始めた母は、呆然とする私の方をつと見遣った。 「もうあんたも大人みたいなものだもんねえ」  母はようやく手を止めて、おばの十二年の空白を静かに語ったのだった。
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