一生のお願い

3/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
私は訳がわからないまま、家まで帰った。私の様子にお母さんは心配したが、適当な理由でごまかして部屋にこもった。夕食は食べなかった。 ほとんど眠れなかった私をお母さんは心配したが、なんとかパン一枚を胃に入れて家を飛び出していた。昨日のうちに彼女の携帯に電話しとけばよかったのだが、どう説明すればいいのか、検討もつかなかった。今日はあの言葉を言わないでほしいと願うばかりだった。 「お願い」 下駄箱であった親友はいきなり私に手を合わせた。 「ごめん」 私は慌てて靴を履き替え教室に向かった。呆気にとられているであろう親友から離れなければならなかった。 屋上で一人お弁当を食べていると親友が息を切らして現れた。 「何で避けるのよ。私何かした?」 休憩時間には雲隠れして4時間目の授業が終わると弁当箱を持って飛び出した。親友の彼女は私を必死に探してここにたどり着いたのだろう。胸が痛んだ。でも、あの言葉を言えば彼女が胸を痛ませることになる。 「聞いて」 私は悲痛な表情を浮かべる彼女に事情を説明した。 「何バカなこと言ってるの」 彼女は私の言うことを信じようとしなかった。冷静に考えると信じてる私の方がおかしいのかもしれない。でも、私は本当に彼女が心配だった。一生のお願いは一度だけしかできない。だから、もう一生のお願いをしないでと伝えた。私があまりにも真剣にだったからか、彼女はうなずいた。 「嫌われたのかと思った」 そう言って、彼女は涙ぐんだ。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!