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彼女は私に一生のお願いをしてこなくなってすっかり安心しきっていた。1ヶ月ほど経ったある日にも私たちは仲良くこれからどこでスイーツを食べようかと話しながら下校するところだった。
叫び声が聞こえた。校門前に生徒が集まっていた。集団の中心に見たことある姿があった。親友の彼女が人混みを分けて駆け寄った。親友の彼が倒れていた。両腕に猫を抱えていた。車の前に飛び出した猫をかばって轢かれたと群衆の一人が話していた。
親友が叫んだ。
「一生のお願い。彼を助けて!」
私は倒れる親友を抱え込んだ。そのまま一緒に崩れ落ちる。彼女は胸を押さえて苦しんでいた。
また、一生のお願いをつかってしまった彼女の心臓は止まろうとしているのだと思った。
私は空に向かって叫んだ。
「一生のお願い。私の親友を助けて!」
親友の息が少しずつ落ち着いていった。救急車のサイレンが近づいて来ていた。親友の彼を乗せた救急車に彼女も同乗することになった。親友は立って歩けるぐらいになっていた。
親友の彼は車にはねられたとは思えないぐらい無傷だった。かすり傷さえなかった。親友は病院で検査を受けたが、胸を痛ませた原因は特定できなかった。
今日も私は親友とおしゃべりにうつつを抜かしながら、帰る。別れた後、あの時のベンチに老婆がいた。隣に座って「ありがとう」と言った。
「あなたも一生のお願いを使ったの。だから、わかるわね」
私はうなずいた。また、一生のお願いを使うと私の心臓も止まってしまうのだ。でも、そんなことはどうでもよかった。親友の彼女とその彼を救った老婆に感謝していた。
「さようなら」
そう言うと老婆は微笑んで、霧になって消えていった。
先のことなんてわからない。でも、一生のお願いなんてこれから一生する事がないだろうと思っていた。
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