鐘の音に想う

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 馬鹿だなぁとは思う。何故私なんかを抱きたいんだろう。まぁ見た目は極上と言われている。孤児が王太子殿下の話し相手として選ばれたくらい頭もいい。でも性格はよくないと思うし、こいつは多分一番の被害者だろうに。 「一回抱いたら飽きるだろうって思った? 男同士がどんなのか試したかった?」  意地悪だとは思うが、今の私はこいつのいう失恋で身も心も寒かった。興味本位で抱かれるとか、一度だけで思いきれるとか、そんな薄っぺらな気持ちじゃ温かくもならない。別にこいつの一番になりたいとかずっと大事にしてくれとか、そんなんじゃない。 「何を・・・・・・」 「やっぱり止めよう――」 「待てよ、何が気に入らなかった?」  寝台から降りようとした私の腕を掴み、男は力任せに押し倒して馬乗りになる。 「私を慰めようと思ってたんじゃないのか?」 「当たり前だ・・・・・・」 「お前の興味本位で抱かれて、私が慰められると・・・・・・本気で思うのか」  子供なら泣くだろう冷めた瞳で見つめた。  私はこいつのいうように失恋しているのだろうか。この心にあるのは、恋心なのだろうか。一番大事な人、自分よりも大事な人、ただ幸せであってほしいとおもうこの気持ちは、恋心という括りで纏めてしまっていいのかがわからない。  一度だって、抱きたいとも抱かれたいとも思ったことはない。 「興味本位っていうのが、やってみたいだけという意味ならば違う――。お前は嫌がるだろうけど、俺はお前が好きだし、お前を抱きたいし、お前の一番側に居たい・・・・・・」  思ってたよりも真剣な告白に息を飲んでしまった。 「ほら、嫌がるだろ。お前がこんな腕でももたれ掛かっていいかって思うほどに弱る時が来るのを虎視眈々と狙ってたんだ。だから・・・・・・、止めない――」  繊細なガラス細工の人形に触れるかのように、男の指は私の頬を撫でた。顔を寄せ、男らしい精悍な顔を神妙に近づけて来て、唇に触れる。拒否されなかったからか気持ちを微笑みに変えて男は嬉しそうに何度も唇を啄んだ。
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