純白

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「作業着みたいなものだと考えてくださいな。描くからには真剣にと思いましてね。」  お婆ちゃんの眉がいつになくきりりと引き締まった。  引っ込み思案なお婆ちゃんがここまで気合を入れる理由はなんだろう。私はそんな事を考えた。 「見てても良い?」  私がそう言うとお婆ちゃんは一度恥ずかしそうに視線をそらしたけれど、すぐ戻してあなたがそうしたいのならと答えた。  私が頷くとお婆ちゃんはまた一度にこりと微笑んで、真っ白いタスキとそして同じ色の鉢巻を締め直した。  真っ白な装束にこびり付くどきりとする様な赤が痛々しくて、なんだか私は胸が痛んだ。  平和どころか。これじゃ戦っているみたいだ…  なんとなく私はそう思った。  それから何日もかけてお婆ちゃんは作品を完成させた。  シートにくるまれた作品が運送屋に運ばれて行くのを見届けるとお婆ちゃんはようやくお婆ちゃんに戻った気がした。  そう私は思った。  その後、予定通りに万国博覧会はめでたく開幕を迎えた。
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