冬の夜。

　ポチッた。
　ううっ。少し緊張した。
　あいつに相談しないで買物をするなんて、何年振りだ？

　今夜は僕が料理当番。
　あいつは残業だから僕が担当すると言うと、予想通り「大丈夫だ、何かを買って食っとけ」と言った。
　しかし、頑なに「僕が作ると」言い張った。

　自分にだって料理くらいできるところを今夜は証明するつもりだ。

　教わったレシピの検索中、右端にチラチラと現れる広告――
　ダイニングテーブルの端に鎮座するこのノートPCは、あいつと共用で使用しているものだ。主に、あいつがレシピ検索や、朝のラジオを聴くときに使っている程度だが。

「ふーん。あいつ、これが欲しいのか……」

　大したものではないし、安い。
　しかも、たった今『タイムセール』中で限定お一人様1つ限りだし、買わない手は無いだろう。明日には届くらしいし、箱を開けた時のあいつの顔を想像するだけでワクワクした。