冬の夜。

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 今夜の料理は、会社の女性スタッフが紹介してくれたサイトを見ながら作った。  材料はメモ書きしてくれたので、その通りに買ってきた。  彼女曰く、「副社長が作るのでしたら、火を使わない方が賢明ですね」だそうで、電子レンジだけで調理できるという、素晴らしいレシピだ。    しかし――……  残念ながら、あいつは貴重な僕の手作り料理を食べられなかった。  トラブルの原因となった新入社員に夜遅くまで付き合い、夕食を食べさせてから帰宅したらしい。  比較的ロングスリーパー傾向にある僕は、先に寝ていた。これは我家のデフォルトだ。  あいつは面倒見が良くて、几帳面な男だ。  昨夜は帰宅後に、自分が用意しておいた料理を丁寧にタッパーに詰め替え、冷蔵庫に仕舞っておいてくれていた。  起床後は、昨夜のご飯をおにぎりにしてラップに包んでいる。  すげー、尊敬する。  冷蔵庫のタッパーを覗き込んで、あいつに訊いてみた。 「あのさ。この料理、今日会社に持って行っていいかな?」 「構わないが……、折角お前が作ってくれた料理だし、今晩の夕食にしてもいいんだぞ? 美味そうだしな」  美味そうだって! 確かに美味かったけどな。 「また作るよ。意外と簡単だったんだ」  材料のメモまでくれて、サイトを紹介してくれた、女性スタッフに見せたいんだよ、と言うとふたつ返事で了解してくれた。 「じゃあ、今日の昼はこのおにぎりとタッパーのおかずで良いな?」 「最高だね! でも、食べる時間が取れるかな……」 「まあ、何とかなるだろう? 時間が無ければ、女性スタッフ達に食べて貰っても良いんじゃないか」  僕としては、お前にも食べて貰いたいんだけどな。
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