冬の夜。

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 ――あ、やべぇ、忘れてた。 「あれ? 宅配ボックスに荷物が届いてるぞ」 「あー。それ、僕が注文したんだ」 「何か買ったのか?」 「まあね」  今夜はいつも通りあいつが夕食係。  寒いからと、今年初の鍋だった。  豆乳と鶏ガラスープは最強コンビだと、年に一回は聞かされる。確かに最強、美味すぎる。心身共にあったまる。  食後、交互に入浴を済ませ、リビングでテレビを観ながら寛いでいるところで、さっきの箱を開けることにした。 「やっと、開ける気になったか?」  僕のそわそわした気持ちは、とっくにお見通しだったようだ。  さすが、千里眼! 仕事がデキる男だけある。 「なんだと思う?」 「さあな」  素っ気なく答えつつも、若干の興味を抱いている様子が、鈍感な自分にも感じ取れた。  もたもたと梱包を解いていると、あいつは僕の手からヒョイと箱を持ち上げ、あっという間に開梱し、しげしげと中箱を見詰めていた。 「おまえ、これ……」  ニヤリと笑い、少し得意になった風を装い言ってやった。 「欲しかったんだろ? 昨夜タイムセールで30%オフだったから、ポチッたんだ」 「そうか。気にはなってはいたんだが。無くても過ごせるものだと思ったら、なかなか手が出なくて後回しにして、そのうち忘れてたんだな」 「早速、つけてみよう!」  画像で見るよりかなり小さいそれの、後ろに隠れていたコードを解いて、コンセントを延長コードに繋いだ。 「じゃあ、僕がスイッチを押すよ」  小さなそれから、勢いよく温風が吹き出してきた。 「あったかいな」 「うん。あったかい」 「エアコンが起動するまでのつなぎに丁度良いな」 「そうだな。料理してる時、足元に置いても良いんじゃないか? この前少し寒かったよ、キッチン」  高さ30センチ程度の小さなヒーターに二人で手を翳し、「これは良い買い物だったな」「ぬくぬくして気持ち良い」等と、ひととき語り合った。
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