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「歩? 俺、謝りたい」  謝る? 謝るってなにを?  本当に謝ってほしいことを柾が理解しているとは、思えない。 「いいよ別に、謝ってくれなくて」  表面的な謝罪に、ああそうですか、一応反省はしてるんですね、いいですよ、許します。なんて返す自信もない。 「歩ごめん、俺……」 「いいって! やめろ」  どうせ欲しい言葉は得られない。  柾はどうやっても、今更――楽人に謝ることはできない。  小さなため息が漏れた。  結局のところ、自分が一番こだわっているのはそこだと思い知って、歩人はため息で往なすしか方法を見つけ出せなかったのだ。 「でも、歩?」 「なに」 「……謝らなくていいって、それって?」 「なんだよ」  探るような柾の視線が刺さってくる。  なんだ?  自分はなにかおかしなことを言っただろうか?  未だ掴まれたままの腕を揺すって解放を訴えつつ、歩人は柾の言葉をゆっくりと反芻してみた。
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