11

8/13
前へ
/170ページ
次へ
 関係ないと言われれば頭にくるが、確かにその通りなので言い返す術はない。  しかし柾はそのことを「気まぐれ」と言ったのだ。  ――いいや、本気ならいいのかと言われれば、それはそれで大問題なのだが。 「俺は許さない。昨夜のことは、犬にでも咬まれたと思って忘れるよ。だけど楽人にしたことは許さない」 「どうしろと?」  今更何をしたって、どうにもならない。  そんなことはわかっている。 「なにかをして欲しいわけじゃない。あんたの言う通り、俺に関係ないと言われればその通りだし! だけど俺は、許さない――それだけだ」  何かしらの償いを求めてはいないが、知っておいて欲しい。自覚しておいてほしい。 「……わかった」  柾は短く返事をして目を伏せると、地面に放置されていた歩人のカバンをヒョイと拾い上げた。 「ん、ほらこれ」 「ありがと」  歩人もまた短く礼を述べて、差し出されたものを受け取ると「じゃあ」と口にした。  これで、さよならだ。  それでいいと歩人は思っていた。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加