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「あるとー?」 「やだ!」  二段ベッドの上の段、逃げ込んで包まった毛布を少々乱暴に引っ張る楽人が何か言う前に、歩人は楽人の発言そのものを拒否した。 「やだじゃなくてね、歩人」 「だから! やだって言ってんじゃん! 楽人のバカ! わからず屋!」  いつになく似合わぬ強引さを見せる楽人に負けじと言った言葉のせいで、一瞬の沈黙が生まれた。 「――あぁそう。僕が、バカなんだね?」  念を押すような楽人の呟きが刺さる。  ヤバい!  歩人は大急ぎで毛布から顔だけ出すと「ごめん! 今のなし!」そう言うだけ言って、また毛布に包まった。 「ふぅーん。いいよ、わかった」  不機嫌な楽人の声が本気のモノかどうか、歩人には判断が付かない。 「だからぁ、ごめんー、今のなし! ごめんなさい」  今度は顔を出さず「ごめんなさい」と歩人は繰り返した。    小さなため息が聞こえた。その後梯子を登り、ベッドの二階の上がってきた楽人が真横に座るギシッという音も。
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