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"探索”
その日の夜。
無駄に広い夕食の席には、私と光冴の2人しかいなかった。
ホテルの大広間の様な部屋。
真っ白に洗い上げられたテーブルクロスが掛けられた、一枚板の巨大なテーブル。
グラスと銀食器は芸術品の様に磨き上げられ、一点の曇りもなかった。
高級ホテルさながらの部屋には、私達2人以外に、爺やしかいなかった。
仮にも、使用人である爺やが席に着けないのは分かるが、翡翠の家族は何故居ないのだろう。
私の心を読み解いたかのように、一人で給仕をしていた爺やが、
「御家族の皆様方は、各々手が空き次第来られるそうで、あと3日は誰もお着きになりません。」
と、教えてくれた。
まだ家族が揃っていないからだろうか、屋敷には極僅かな使用人しか在中しておらず、爺やが給仕までやる始末だった。
私のイメージでは、何人かの使用人が部屋で待機し、給仕をするものだった。
が、実際には、爺やが部屋の隅で佇むみ、料理を二人分、両手に持って運んでいた。
料理は、料理人が作っているのか、高級店で出てきそうな、フレンチのコース料理だった。
が、元が庶民の私からすると、量は少ないわ、味は大人っぽいわ、食べ方の作法に気を遣うわで、あまり良いものとは言えなかった。
そんな私とは裏腹に、向かい側に座る光冴は、見た目からは想像できない、繊細で美しい手付きで食を進めていた。
「お前ん家の料理やっぱ美味ぇわ。
家のは和食ばっかだからなぁ……」
と、光冴が満足気に語ると、爺やが「ありがたきお言葉」と、嬉しそうに応答していた。
「そういえば」
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