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部屋に戻り、光冴が眠りに着いたのを見計らって、私は部屋に備え付けてある洗面所へ籠った。
勿論、ヨハネスとの報告会の為だ。
念話で話せる為、ベッドの中で行ってもいいのだが、資料を見る為や、個人スペースの確保の為、籠る事にしたのだ。
「ハロー,ハロー。
ドッペルゲンガーとして、初仕事の気分はどうです?
楽しんでます?」
今日聞くのは2回目の、ヨハネスの声。
相変わらずの様子で、なんとなく心が安らぐ。
いつもの憎まれ口も、楽しいと思えてしまう。
「少なくとも楽しくはない。」
「あはははははは」
そんなどうでもいい会話を交わしていると、ヨハネスが話を進めた。
「で、進捗はどんな感じです?」
「実家行って、ご飯食べた。」
「…………」
あまりにもサッパリとした答えに、ヨハネスが絶句する。
「……あと、1週間とちょっとしか無いんですよ?
そんなんで大丈夫ですか?」
不安の色を全く隠さないヨハネス。
それに対し私は__
「大丈夫。あと1週間とちょっともある。」
馬鹿みたいに楽観的だった。
「明日は、書庫に行くことになってるから、情報は沢山得られると思うの。
だから、心配しないで。」
と、前向きにヨハネスを励ます。
「そっちの、翡翠の様子はどう?」
私が尋ねると、地雷を踏んでしまったのか、ヨハネスは大きな溜息をつき、
「なんなんですか!あのお坊っちゃんは!!」
と、突然キレた。
「こっちに来た途端、誰も居ない世界に興味津々で、あっちこっち駆け回って……
餓鬼ですか!?えぇ!?
クソガキなんですかぁ!?」
怒りに身を任せたヨハネスは、なおも続ける。
「し・か・も!
ふらふらした挙句に、他のドッペルゲンガーと鉢合わせそうになったんですよ!?
こっちがどれだけ苦労した事か……
気持ち良さそうに眠って、いいご身分ですよ、まったく……」
まぁ、彼は実際いいご身分な訳だが。
それを今日、痛いほど痛感してきた私には、ツッコミを入れる気力すら芽生えなかった。
と、いうか。
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