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「で?なんて?」
「『爺や』だそうです。」
そうして私は、ようやく得た情報を元に、カオス脱却を試みた。
「…………っ!爺や!?」
6歳以降は一切交流を持っていなかったという。
ならば、彼の事を思い出せず苦悶いていてもおかしくは無いだろう。
「ほっほっほっほっ。
何を悩まれておるかと思えば、爺の事を思い出して下さっていたんですね。
爺は嬉しゅうございます。」
そして、爺やは改めて手をぎゅっと握ると、
「お久しぶりでございます。翡翠坊っちゃま。
お元気そうでなによりです。」
と、挨拶をした。
私には、翡翠と爺やが過ごした時間はわからないが、この老人の温かな体温と、我が子を見守る様な視線にから、いかに温かな時間を過ごしてきたのかが伝わってきた。
この時ばかりは、翡翠に罪悪感が湧いた。
彼との感動の再会を、私が代わりに果たしてしまったから。
その後、光冴と共に、爺やに実家を案内された。
夏目家所有の家は幾つかあるらしく、セキュリティの為、正式な本家の場所は決められていないんだとか。
今回宿泊する家は、都内にあり、夏目家の中では比較的小さな家だと言うから憎たらしい。
爺やと翡翠は、6歳までここで住んでいたという。
「もう10年程前のことです。
あまり覚えておりますまい。
翡翠坊っちゃまは昔から本当に元気が良くて_」
と、部屋をまわる度に、翡翠の昔話がついてきた。
最後に案内された部屋は、かつて翡翠の部屋だったそうで、今は客室となっていた。
そこで、約2週間、光冴と宿泊することになった。
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