誕生!僕らの名探偵

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「どうにかして紐を解いてさ、柔道部の連中に襲わせるってのはどうだ? 相手は一人なんだから、数で圧倒できるんじゃないか?」 「止めた方がいい。向こうは拳銃を持ってる。上手く倒せたにしても、こっちだって怪我人、最悪死人を出してしまう。僕らの勝利条件は逮捕じゃない、生存なんだ」 「だからってさぁ、大人しく捕まってろって言うのも危ねえじゃねぇか。あの野郎が突然襲いかかってきたら……」 「それは無いよ」 「どうして分かるんだよ?」 「騒がない方が安全である決定的な根拠を、僕は提示する事ができる。希望的観測なんかじゃないものをね」 東郷の態度は自信に満ち溢れていた。 出任せや安易な願望で無いことは、強く真っ直ぐな眼差しが何よりも雄弁に物語る。 「根拠は単純明快。犯人の目的が僕らではないって事さ」 「なんでそう言い切れるんだよ」 「学校に立て籠ったからだね。ここは塀に囲まれてるでしょ。もし出入り口を封鎖されたら脱出が困難になる」 「だから、どうしたってんだ?」 「つまり、犯行後の逃走を考えてない事になるんだ。すると、彼の目的は2パターンに絞られる。単なる殺人狂か、僕らを人質にとって大きな事を成し遂げたいか、となる」 東郷が『殺人』と口にするなり周囲はざわついた。 中には、隣人の肩に顔を埋めて泣く生徒まで現れ始める。     
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