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「なぁ、今犯人がとんでもない事叫んだぞ!」
「ヤダヤダ! そんなの絶対ヤダァ!」
「おい東郷! どうすりゃ良いんだよ、東……?」
男子生徒は思わず凍りついた。
先ほどまで滑らかな弁舌を振るっていた青年が、沈黙を保っているからである。
何も語らず、微笑みを浮かべたままに。
その表情は辺りの狂乱ぶりから掛け離れており、見るものに恐怖心を与えるのだった。
「オラァ! 童顔の巨乳女は居るかぁ!」
怒り心頭となった犯人が部屋に乱入してきた。
それを合図にしたかのように、女子生徒たちは一斉に逃げ惑った。
後手に縛られたまま、床を這いずるようにして。
「そこの窓際の女、まずはお前からだ! 撃ち殺されたくなきゃ動くんじゃねぇ!」
「ヒィッ!?」
犯人の求める要望に近しい生徒が標的となった。
指を向けられた少女は2度、恐怖に身を震わせた。
1度目は銃を片手に持った男が近ずいてきた時。
次なる2度目は、その男の真後ろで微笑む、東郷の姿を見た時だ。
犯人に気付かれる事なく背後を取った東郷は、ジャケットの内ポケットからスタンガンを取り出し、それを男に押し当てた。
鋭い炸裂音が、続いて女子からの悲鳴が響き渡る。
次の瞬間には銃が床に落下し、壁際まで滑っていった。
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