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誕生!僕らの名探偵
ここは、どこにでもある片田舎の高校。
レクリエーションルームとして活用されている一室に、30人ほどの生徒が集まっていた。
いや、押し込められたと表現するべきか。
男女の垣根なく、全員がビニル紐で後ろ手に縛られ、床に座らされているのだ。
誰もが俯き、悲嘆に暮れている。
ただ一心に願うのは、無事に我が家へ、愛する家族の元へ帰る事だ。
騒いだり喚いたりはしない。
ゆえに女子生徒などは、さめざめと泣く。
隣室に控える犯人を刺激する訳にはいかないからだ。
人質となった生徒たちは、奇妙な程に統率が取れていたが、これは担任教師の手腕ではない。
周囲には教師どころか一人の大人すら居ないのだ。
では、何者が主導しているのかというと……。
「みんな、冷静になってね。くれぐれも犯人を怒らせないように」
クラス委員の青年である。
彼は華奢な風貌ながらも、穏和な人柄と地頭の良さから、級友から少なくない信頼を得ていたのだ。
もちろん全服の信頼とまではいかず、彼の示す基本姿勢には疑問の声もあがった。
「なぁ東郷。このまま大人しくしてて良いのか?」
「もちろん。それが一番安全だからね」
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