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September 揺れる呪い
「蓋は…… どうなってるんでしょうか」
本気で怖がっている金剛寺は、いつの間にかわたしの袖を掴んでいた。
「…… えーっと、金剛寺。とりあえず三人いるんだし、何というかその手を放しやがりなさい」
「はっ、すいまっせん!すいません」
「ばっはははは! こんちゃん最高だわ」
俺の袖掴んでくれないなんて嫉妬しちゃう、と言う山崎の袖を、金剛寺は本当につかんでいた。もう何も言うまい。
「でさ、何なんこれ」
「わたしに訊かないでくれ。でもなんか変だね、こんな場所に」
「蓋は……」
あった。いかにもな二つ割れの木製の蓋を見て、金剛寺は更に怯えた。
「俺が居てよかったねこんちゃん。ところでお前は怖くないわけ」
「悪いけどわたしこういうの全然怖くないんだよね。一人でも多分大丈夫だったと思う」
「ほんっと可愛くねえのなお前」
山崎を無視してわたしは蓋に触れてみた。少しひんやりとしている。
「開いた……」
蓋の片方を脇に置いて、井戸の底を眺めてみる。特におかしな様子も無い。
「そういえばさ、俺思い出したんだけど」
「なに」
「これって、学校で噂されてなかったっけ」
「これ?」
「この井戸。あるじゃん、七不思議的なやつ」
「そっ、それはどういった……」
「しょうもな」
そういえば聞いたことがあった。高校生にもなってどうかと思うのだが、いわゆる学校の七不思議というやつの中に、井戸がどうたらいうやつがあったような気はする。わたしはその類の話をほんとうにしょうもないと思っているので内容は完全に忘れたのだけど。
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