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「よし、俺も乗ろっと。お前らも来いよお」
何となく横並びでブランコに乗ったわたしたち。大きいのが三人と、ちっさいのが一人。ゆらゆら揺られながら、わたしはただただ五月の空を見ていた。何も考えていなかった。
隣の金剛寺を見た。あからさまに恥ずかしそうに人目を気にしている。わたしはふふっと笑って、いいじゃん別に、と言った。金剛寺はすいません、と言った。
「うし、腹減った。帰るぞ健太」
えー、まだやだよ、と言う健太くんの手を強引に引いた山崎とわたしたちは、そのまま柏木さんの家へ向かった。
「健太は将来何になりたい?」
「大人になったら?」
「そ。俺みたいなかっこいい大人になりたい、とか」
「うーん。パイロットがいい」
「そっか。なんでパイロットなの、健太くん」
「飛べるから」
「お前はほんっと駄目だな。子供に理由なんか聞いてどうすんだよ馬鹿」
「そういうあんたはどうなのよ」
「俺? 芸能人」
「本気で言ってるよね、どうせ」
「だって俺かっこいいもん。性格もいいし。あ、悪いけど俺が有名になってからしたり顔で『山崎くんと仲良かったんですう』とか止めろよな。ダサいから、そういうの」
「うんうん。がんばってね」
「僕も応援します。山崎さんなら大丈夫です」
「だろ? こんちゃんと健太は俺と仲良かったって言ってもいいぞ! 凄くない? お前さ、今のうちよ? 俺に告白するなら」
はい分かりました頑張って芸能人になってください応援してます光栄です、と一気に棒読みしてから、わたしは山崎に無表情を見せつけた。
山崎と健太くんが屈託なく笑っていた。
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