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July ここでミスして。
「センター! 走れ馬鹿!」
白球を追うわたし。頭上の太陽は今まさにわたしの敵だ。
「目えついてんのかうすのろ! 投げろ投げろ!」
とんでもない罵声を浴びせられながらわたしはなんとか右肩を振り回した。ぽて、と目の前に落ちたボールは何度見ても白い。
「はあーあ……」
草野球に誘われたのはまあいいとしよう。しかし、なぜに金剛寺がマネージャーでわたしが選手なのか。それもこれも全部山崎の奴が余計な一言を放ったからなんだ。
「お前さ、愚鈍そうに見えて意外と運動神経良かったりしねえの」
わたしはたしかに否定したのに。
「あっそ。来週土曜、校庭集合な。隣町の商店街チームと試合。二時」
更なる罵声を浴びせられないように、わたしは懸命に走ってベンチへ戻るふりをする。
「点はまだ入れられてないけど…… うちもまだ得点無いわけで。みなさん、私が言いたいことが分かりますね」
眼鏡をかけた中年の女性が言った。
「すいません」
わたしは率先してそう言った。なんとなく自分のことを指してるのだと思ったからだ。同時に、試合が終わったら山崎を蹴り飛ばそうと心に決めていた。
「何を謝るのあなた? あなた頑張ってるじゃない、どんくさいけど」
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