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目の前のピッチャーは確かに緊張しているようだった。わたしがこの人の立場なら間違いなく吐いているところだ。そんなことを考えていると、わたしの脇腹にボールが直撃した。
「デッド! ゲームセットお!」
わーわー、と歓声が鳴る。ホームに帰って来た三人はわたしを素通りしてベンチの面々とハイタッチをしに行った。
「よくやったわ、お嬢ちゃん!」
ベンチに戻ったわたしに珍しく抑揚をつけて監督が言った。そっすか、それはどうも、とわたしは答えた。
「素晴らしいわみんな。よくやったわね。さ、さっそく敗者の顔を見に行きましょう!」
サウンドオブミュージックの主演の女の人ばりにさわやかな声でどぎついことを言い放つ監督は、言葉通りに相手のベンチへ猛ダッシュしていったのだった。
こうしてわたしたちの夏は―― しょうもない夏空の下の試合は ―― 幕を閉じたのだった。
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