October 残酷なわたしのテーゼ

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October 残酷なわたしのテーゼ

「これからお前らに命題(テーゼ)を与える」  わたしがそう言ったとき、山崎はほーん、と気の無い返事をした。 「なに、頭おかしくなったのお前」 「テーゼですか…… どのようなテーゼなんでしょう。というかテーゼって何ですか」 「これを見たまえ」  わたしがノリノリなのには理由がある。わたしは右手にしろい紙を持って、それから続けた。 「『交通量調査員募集』…… 分かるかね」 「分かんねえよ。そろそろその司令塔っぽさがうざいんですが」 「アルバイトの募集でしょうか」 「然り」  わたしたちの街から二駅離れた市街地での交通量調査。この場合徒歩で行き交うひと達をひたすらカウンターでカチカチするやつだが、時給が破格だった。 「なんとお時給千二百円」 「うお、マジでか」 「時給千二百円…… は高いんですか」 「ちょっと待って金剛寺。バイトしたことないのあんた」 「はあ……」 「え、なにこんちゃん、もしかして良いとこの子だったんかお前」 「いえ、そういうわけでは……」 「でもわたし金剛寺が御曹司の息子だって言われたらなんか納得するかも」  半分ほど意地悪を込めて言ってみたら、金剛寺はひどく照れくさそうに頭を掻いていた。 「でもさ、こういうのって高校生は大丈夫なんか」 「わたしに抜かりはない。年齢制限も調べてあるよ、ちゃんと。しかもこれ、三名限定なんだよね。一人じゃ応募できないやつ」 「ああ、なる。ほんで? 俺達にこれを受けろと?」 「そうなるね」 「どうよ、こんちゃん」  まだ頭を掻いている金剛寺は言った。 「お二人と一緒なら、ぜひ」
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