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「着いた」
二階に車の通らないロータリーを構えたような構造の立川駅東口に着いて、わたしたちは先に仕事を始めていた前半組と交代し、しょぼいパイプ椅子に腰かけた。
「さてと」
三人分のカウンターを手にしたわたしは、ひとつずつ二人に渡してから、仕事の説明を始めた。
「えっと、やることが二つあってだね。まずは、そこの東口の改札から出てきた人をカウントすること。総量調査ってやつね。そんで、二つ目はその人たちを男女別、それから年齢別に分けてカウントすること」
「めんどくせえな結構」
「この場合、三人がそれぞれで全部を担当して最後に答え合わせ、って形でもいいんだけど、どうする」
「あん? 何が」
「いやだから、最後に答え合わせして合わなかったらどうしようとかあるでしょ」
「そうですね、僕も数学に弱くてあまり自信は」
「何言ってんだこんちゃん」
真顔でパイプ椅子に座って話し込む私たちを見て、通行人が訝し気な視線を浴びせてくる。
「まあいいわ。じゃ、やっぱり手分けしよう」
「じゃおれ総人数のカウントするわ、めんどくせえから」
「分かった。じゃ、わたし年齢を分ける担当になるから、男女別のほうお願いね、金剛寺」
「分かりました」
こうしてわたしたちの仕事はスタートした。
休日の立川駅は郊外とはいえやはり東京のそれだった。さっきまでそれほど感じなかった混雑ぶりが、目に見えて激しくなっていく。
「なんだこれ、めっちゃ来んじゃん、人」
「そのほうが時間早く過ぎていいでしょ。金剛寺、大丈夫?」
「はい、ただ、メモを取るのが忙しくて」
どうやら男のほうをカウンタで数えながら、女のほうはメモに手書きで正の字を作るという手法を取っているらしい。なかなかに賢いやり方だと私は思ったが、山崎は若い女の子を見るたびにいちいち反応していた。
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