先生、美術室貸してください

4/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
僕はその生徒を見たことがあった。 クラスは一緒になったことはないが、確か同じ学年の子である。 僕がその子に、 「どうも。」 と軽く挨拶すると、向こうはペコリと頭を下げた。 「僕は二年一組、田中悠。 確か君も同じ学年だったよね?」 「僕は二年三組、木越健一(きごしけんいち)。 僕も君を見かけたことはあるけど、こうやって話すのは初めてだね。」 先生が言っていたように、今は少子化が進み学校の生徒数も年々減少傾向にあるらしい。 しかし、そうは言っても、こうやって話したことが無い生徒同士がいることを思うと、圧倒的に多い帰宅部生徒を真・帰宅部に迎えることにより、まだ見ぬ生徒同士を結びつけ、若者の活性化に繋がるんではないかという、かなり強引な理由をもって、今度もう一度木島先生に相談をしてみようかと思う僕であった。 「絵を書いているところ急にごめんよ。 外から君の書く絵が見えてね。少し近くで見たくなったもんで。 それにしても、素晴らしい作品だね。 何か引き込まれる、そんな不思議な魅力をこの絵から感じるよ。」 僕がそう言うと、健一君はすごく嬉しそうにしていた。 「そうかな? そう言ってもえると嬉しいけど、なんだか恥ずかしいな。     
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!