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諦めが肝心なんて誰が言った
僕は翌日の放課後、健一くんと約束した通り、美術室に向かった。
ガラガラ
入ると昨日と同じく絵を描いていた。
「やー、健一くん。
今日も筆が軽やかそうだね。」
「あ、田中くん。
本当に来てくれたんだ。」
健一くんはにこやかに言った。
「僕にはかまわず絵の続きを書いてくれ。
適当にそこらでくつろがせてもらうよ。」
僕は田中くんから少し離れた後方の椅子に座った。
それからの一時間は、田中くんが絵を描くのを眺めたり、時に外の風景を眺めたり、ゆったりとした時間を過ごした。
あまりのゆったりさに、少し眠気が襲い始めた頃、美術室の扉がガラガラと開いた。
「なんだ、久しぶりに様子を見に来たら、木越だけじゃなくて、田中までいたのか。」
そう言って入ってきたのは木島先生だった。
「もしかして、帰宅部創立をあきらめて、うちに入部する気にでもなったか?」
"出たな人斬り木島ノ衛門。"
僕は戦闘体制に入った。
「これはこれは、木島先生ではないですか。
一体ここへ何用でしょうか?」
さー、どこからでも掛かってこいと言わんばかりの言い方をした。
「いや、何って俺は美術部顧問であり、美術部部員である生徒の様子を見に来たんだが。」
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