新生活

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「ただいま。」 声をかけるとパタパタと足音がして 楓がひょこっと顔を出した。 「高嶺さん。お帰りなさい。」 そのまま抱きしめ ちゅっとキスをすると すぐに頬を真っ赤に染める。 身を離し 楓はまたパタパタとキッチンへと向かう。 俺は靴を脱ぎ リビングへと足を向け ネクタイを外した。 「高嶺さん。先にご飯食べますか? それともお風呂入りますか?」 キッチンから声がかかる。 楓がいい。とベタな事を言いたくなるが 止めて 「飯にしましょう。」と答えると はい!と返事が聞こえてきた。 スーツのジャケットを脱ぎ シャツも脱ぎ捨てて バスルームへと行き洗濯籠に服を放り込む。 手を洗いうがいをしてからスーツをかけに ウォークインクローゼットへと向かい 着替えてリビングへと戻ると 楓がダイニングテーブルの上に料理を並べていた。 「今日。槙さんの奥さんがお魚を店まで 持ってきてくれたんです。」 見ると大きな金目鯛の煮つけがどーんと テーブルの上に鎮座している。 漁に出ると魚があまり食べたくなくなる事を知った 楓はハンバーグも作っていた。 「旨そうですね。」 出してくれたビールをグッと飲み 目の前のひじきの煮物を摘まむと 楓は自分用に飯を持って席に座った。 既に摘まんでしまったが 無かった事のように 手を合わせ一緒にいただきます。と言う。 金目の煮つけに手を伸ばし パクっと口に放り込むと 丁度いい甘さが口に広がり上品な白身の味わいも 残したままでとてもいい塩梅だ。 「旨い。」 そう言うと楓は嬉しそうにニコリと微笑んだ。
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