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千夏さんが瑛太くんを迎えに来た。
この島に唯一 一軒あるファミレスで週に3日
パートをしている。
槙さんの手伝いもして 家事もこなし子育ても。
パワフルでいつも元気な千夏さんは
ここで店をやるようになってから
しょっちゅう顔を出してくれ
よく魚を持ってきてくれては
「高嶺さんに食べさせて!もう魚なんか
見たくないかもしれないけど。」
とけらけら快活に笑う太陽みたいな人だ。
千夏さんはまだ俺が高嶺さんの弟分だって思ってる。
高嶺さんが身内だって説明を付け加えたからか
親戚で ヤクザさんとしては出来が悪いから
こっちに一緒に連れて来て喫茶店を
やらしていると思ったみたいだった。
「向いてなさそうだもんね!大丈夫。
やり直しはいつからだってきくから。」と
来たばかりの時に バンっと背中を叩かれ 慰めて貰った。
この島の女性陣の中心らしく 事前に
うまく話をしていてくれたみたいで。
特に説明をしなくても 島の人達から
普通に優しく受け入れてもらえた。
「楓ちゃん。ありがとね! 」
そう言ってお金を払い 瑛太くんの手を引いて
ドアまで行くと クルッと振り返って
「ああ。そうそう。明日 高嶺さんと夜
ご飯食べに来て! お父さん会いたいって言ってるから。
うちのに高嶺さんに声かけさせてるから
楓ちゃんも一緒にね。待ってるから!」
そう言ってくれる。
瑛太くんが
「楓!必ず来いよ!」と言い
千夏さんに頬っぺたを引っ張られながら
手を振って店から出て行った。
「相変わらず元気な人だね。」
遥くんは 冷静にポツリと呟く。
まだ中学生なのに とても大人びた物言いだった。
「お前もあれくらいもうちょっと元気出せば?」
涼さんがかき混ぜるように言うと
すっと冷たく一瞥し
「公務員って暇なの?」
涼さんは首をすくめ コーヒーを飲み干すと
あー。忙しい。と言いながらお金を払って
手を上げてニッコリ微笑むと店を後にした。
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