知る

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恋人のご機嫌をこれ以上損ねる訳にはいかない。 「で。その息子の様子から市長がどういう人物か 気になったというんですね。」 話をもとに戻すと 楓は膨れるのをやめて頷いた。 「市民が反対運動を起こしているのに その市の市長がどう考えているのかが 耳に入ってこないんです。 市として反対の姿勢を示せば そんなに簡単には 開発は進められない筈なんですけど。。 大きな都市の地上げと違い 島での事ですから。 もっと役所と市民の関係性は密接かと 思ってたんですが。。」 楓は刑事モードでそう言い キャメルの手帳を開いた。 俺が誕生日にプレゼントした物だ。 使用頻度が高いのか 既にいい色合いに変化している。 相変わらず報告になると淀みないな。 また笑いが込み上げてきたが グッと堪える。 楓は気付かず 手帳を見ながら話を続けた。 「志田市長は3期目で もともと父親がかなりの 権力者でその基盤を軸に市長になっています。 ただ 余り目立った功績も無く 来期は難しいだろうとも言われているそうです。」 楓は首を傾げ 「うちにくるお客さんの中での評判は あまり良くありませんでした。 あからさまに無能呼ばわりする人もいて。。」 「なるほど。つけ込むにはうってつけの人物の ようですね。来週末 リゾート開発会社の説明会が あります。市長も出席するでしょうから その前に もう少し情報を集めましょう。 槙の父親なら 色々知っているかもしれない。 明日夕飯に誘われていますが 聞いてますか。」 楓はコクンと頷いた。 「千夏さんから聞いてます。明るくて 元気な人ですね。いつも色々助けて貰ってるんです。」 「ああ。あの子は昔からあんな感じです。 この島の生まれではなくて 槙がうちにいた頃 知り合って一緒にこっちに来た。」 へぇ。。と楓は驚く。 「いつも皆さんの中心にいる人なので この島の人だと思ってました。」 俺は苦笑し さらにびっくりするであろう事実を口にする。 「千夏は 樋口さんの娘です。」 楓は ポカンと口を開け 完全にフリーズした。
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