知る

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「佐々木さん。すいません。これお願いします。」 声がして振り返るとキッチンから出てきた 楓が佐々木に皿を渡している。 俺が見ている事に気づいて にこっと笑顔を見せた。 佐々木はわかりました!と元気よく返事をして 皿を持ってきてテーブルに置く。 「神田はどうした。」 戻ろうとする佐々木に声をかけると顔をしかめ 「アイツ。最近色気づいてるんです。 ほとんど毎晩どっか出かけて行ってて。 兄貴。一回締めてやって下さいよ。」 口を尖らせそういう佐々木に 「まあ。好きにさせておけ。 アイツにだってプライベートはある。」 俺が取り合わないでいると つまらなそうに はい。。と頷いた。 「お前だって別に遊んでもいいんだぞ。」 槙が近寄ってきて話を聞いていたのかそう言うと 「俺は兄貴一筋ですから!」と さも当然と鼻息荒く佐々木はそう答える。 「迷惑だ。」 切り捨てると 途端になんでですか!と詰め寄ってくる。 圧倒的にめんどくさいが 可愛くない訳ではない。 「兄貴も随分と丸くなられて。昔はみんな 恐ろしくて そんな風に近づけなかったぞ。」 槙は苦笑しながらそう佐々木に言うと 「今も怖いです!でも俺ホラーとかお化け屋敷とか 全然大丈夫なんで!」 自慢気に言う佐々木の頭に拳骨を喰らわす。 全く。 人をなんだと思っている。 必死に謝るバカを無視して ビールをグッと飲んだ。 槙がにやにや笑っている。大方また俺が変わったとでも 思っているのだろう。 まあ。確かに。昔は今よりももっと冷めていた。 組内部でも関わりを持つ人間を最小人数にし 表には極力出ない。 それは今でも変わらず ただ最小人数の数が 昔より若干増えただけだ。 俺が関わりを多く持つと それは元に影響し 危険が増える事になる。 次期三代目としての柏木元は極力表には出さない。 たまにシマの騒ぎを治める時に姿を見せるくらいで 鬼頭はそれさえも難色を示すくらいだった。 俺が丸腰でこの島に来たのは 麻生組に 面が割れていないからだ。 相対しても気づかれる事はないだろう。
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