知る

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「こんばんは。」 座敷に涼という槙の幼馴染が顔を出した。 「涼。ここ座れ。」 槙が俺の隣を指差すと 頭を下げながら 近づいてきて隣に座る。 「どうも。」 俺に向かって 声をかける涼に黙ってビール瓶を 差し出すと 恐縮しながら目の前のコップを取る。 ビールを注ぐと すいません。とグッと飲んだ。 コイツは役所に勤めているらしく 槙が気を利かせて呼んでいたらしい。 楓から市長の息子の話を聞き 情報を集めようと俺が考えている事を知っているからだ。 まあ。その前にコイツが俺に興味津々だがな。 ビールを飲みながらチラチラと俺を伺う様子に苦笑し 「聞きたい事があるなら 答えられる範囲なら答えるが。」 俺の言葉に涼は いや。。あの。。と慌てながら 「来生さんは槙とどういう知り合いなのかな。と。」 まあ。そこだろうな。 「高嶺でいい。来生は親父の呼び名で 周りは全員俺を下の名前で呼ぶ。」 「あ。わかりました。じゃあ。。あの高嶺さんは。。」 「槙が本島に居た頃何をしていたかは知っているか。」 コクンと涼は頷く。 「俺の兄貴分だよ。」 槙がテーブル反対側に座り ビール瓶を差し出した。 コップを出すと 隣から康夫もコップを出す。 槙は千夏の様子を伺いながら二つのコップに ビールを注いだ。 「随分と世話になってなあ。高嶺さんと三代目には 本当に良くして頂いて。」 ビールを飲みながら そう言う康夫に槙も頷く。 へえ。。と涼は目を丸くした。 「全然そうは見えない。漁師にも見えないけど。。」 「とりあえずここでは伏せてるから内密にな。」 槙がクギを刺すと わかってる。と頷く。 「え。じゃあ楓ちゃんも?」 槙が ん。と詰まり 困ったように俺を見た。
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