知る

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変わらずここでも社交性を遺憾無く発揮しているらしい。 千夏の話に なるほど。。と楓はポケットから 手帳を出しかけ あ。と気づいて手を引っ込めた。 思わずクッと笑いが漏れる。 隣で不思議そうに涼が見ているのを感じ 急いで咳払いをして誤魔化し 「説明会には市長も出席するのか。」 と話を振った。 槙がどうなんだ。と涼に問いかけると ああ。と返事をして 首をひねる。 「立場的には出ないとダメだろうから出るとは思うけど。まあ。多分ダンマリ決め込むんじゃないか。 あの人 意見言う人じゃないしな。」 「あのボンクラはなんの役にも立たん。」 康夫は苦々しく吐き出した。 「ボンクラ。。そうなんですか。」 楓が問い返すと 康夫はビールを飲み干し 日本酒の徳利を持って盃に酒を注ぐ。 千夏が目を剥いて怒ろうとするのを 槙がすっと制し 康夫はそのまま話し始めた。 「アイツの親父はよく出来た人だった。 だが子育ては失敗したらしくてな。 甘ったれで しょっちゅう本島に行って 遊んでばかりだった。 親父の地盤で市長になったが なんも変わっとらん。 今だって 繁華街のスナックに入り浸りだし 相変わらず本島行って遊んどる。 もうアイツは駄目だ。次は無い。」 島にも繁華街はあり 観光客相手のバーやスナック レストラン。リゾートホテルとビジネスホテルも 数軒 船着場と飛行場の周りにある。 住人が普段生活している地区とは離れた島の反対側で そこだけはこじんまりとしたリゾート地の様相だった。 あの。。と楓が口を挟む。 「それなら。。普通 反対の姿勢を示しませんか。 お客さんから聞いた時もそう思ったんですけど。。 次が厳しいならなおの事 島の皆さんが 反対されているのだから 同調して 少しでも支持を増やそうと。しないのかなって。。」 涼は頭の上で両手を組み 天井を見上げ 「どうかなぁ。。」と呟いた。
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