知る

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「市長の奥さんやり手でさ。本島で会社経営してるから ほとんどこっちに居ない。まあ。だから市長も 遊びたい放題なんだろうけど。」 え。。。 楓が顔を曇らせる。 「それじゃあ。。遥くんは。。」 「うん。家政婦が食事とか用意はしてると思うけど 家にはほとんど誰もいないんじゃないかな。」 涼の言葉に 楓がそっと伏し目がちに俺へと目線を送る。 そうだな。 俺の幼少期と同じだ。 家に居たくない気持ちも分かる。 だが俺には庄司もいたし 鬼頭も他の舎弟連中も 可愛がってくれた。 あの子はそういう大人も周りにはいないのだろう。 その寂しさから目を背け 必死に早く大人になろうと しているのか。 「噂では離婚話も出てるって。 お前らもそれは聞いた事あるだろう。」 槙が涼に聞かれ ああ。と頷く。 涼はビールのコップを持ちゴクリと喉を潤してから 話を続ける。 「慰謝料だなんだで揉めてるって噂もあるし もともとこの島に情が深い人でも無いから。」 「目先の金に動く可能性があるという事か。」 俺の言葉に はい。と涼は頷いた。 「それにうちの観光課の萩野課長には 気をつけた方がいい。あの人は開発推進派だから。 この間も会議で長演説ぶっ込んでたよ。 市長抱き込んで無理矢理推し進めるくらいは するかもしれない。 相手の会社 ヤバめなんだろ。」 裏金か。 まあ。それくらいは既にばら撒いているだろう。 槙への嫌がらせをしている人間も金を貰い麻生組の代わりにやっているのかもしれない。 ただ 俺が島に来てからはぴたっと止まった。 用心棒と捉えられているのか 遠巻きに見ている奴らがいるのは気づいていた。 嫌がらせをしている奴も目星はついていて 事前にこちらに送り込んでおいた若い衆を 見張りにつけてある。 「荻野課長も説明会出るはずだ。 反対している人間の把握もしたいだろうしね。 槙。気をつけろよ。 この説明会キッカケに動き出すよ。きっと。色々な。」 涼は幼馴染を気遣い そう言って槙の盃に 日本酒を注ぎ 自分のグラスをカチンと合わせた。
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