休み

4/17
2639人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
まだ薄暗い外に出てジャグジーへどぼんと浸かる。 楓はまだちょっと酒が残っているのか 目がうるうると潤んだままだ。 佐々木の運転で家につき 後部座席を出た時から 楓は俺にしがみつき一切離れなかった。 顔を真っ赤にして見送る佐々木に礼を言い 家に入って とりあえず引きずるように リビングまでそのまま連れてきて 「楓。着替えましょう。」 と声をかけたが 楓は俺の胴にしがみついたまま いやいやと首を振る。 「じゃあ一緒に風呂入りましょう。」 そう言って服を脱がそうとすると 更にぎゅっと俺を抱きしめる。 その腕を離そうとしても全くびくともしない。 一体どこからそんな力が出ている。 普段は非力で 10kgの米さえ苦労しているのに。。 これは困った。 甘えモードが発動すると確かに俺に抱きついてくるが ここまでがっしりと離れないのは初めてだ。 さっきの話が影響しているのか。 市長の息子が置かれている状況を知り 胸を痛め 哀しげな顔をしていた楓を思い出す。 俺のガキの頃とシンクロさせたのかもしれない。 あの事件を思い出したのか。 母親に捨てられ 死なれた俺の境遇を思い出し 自分はここにいるから。とでも言っているかのように 楓は俺を離さない。 自分だって親の愛情に恵まれない幼少期を 過ごしていたのに。 楓の愛情にはいつも母性を感じる。 「楓。」 名前を呼ぶと潤んだ瞳で上目遣いに俺を見上げ にこっと微笑み またぎゅっとしがみついてくる。 そのおでこにちゅっとキスをして そのままなんとか抱え上げ ベッドルームへと移動した。 無理やりジャケットを脱ぎ ネクタイを外して 椅子に放り投げ 抱きかかえたまま ベッドに身を投げる。 ずるずると引きずりながら枕を二つ背中に入れて 胴にしがみついたまま動かない楓の顔を覗き込む。 横たわり安心したのか目を瞑り 楓はすうすうと寝息を立て始めた。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!