休み

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腕に寂しさを覚え 目を開ける。 辺りを見渡したが 楓がいない。 時計を見ると 昼をとうに超えていた。 それでも気だるさに動く気がせず 少し開いているドアに向かって 「楓。」と呼んでみる。 パタパタと足音が聞こえ ひょこっと 腰にエプロンを巻いた楓が顔を出した。 ん。と両手を広げると 困ったように眉を下げ 近づいてきた楓を絡めとり抱きしめる。 「勝手にいなくならないで。」 俺が抗議すると 「すいません。。でもそろそろお腹空くかなって。。 高嶺さん。よく寝てたので。 先に用意したかったんです。」 楓はそう言ってニッコリ微笑むと そっと身を離し 上目遣いに俺を見上げた。 「いい天気なので。ピクニックしませんか。」 ピクニック。 弁当持ってという事か。 「いいですよ。どこか行きますか。」 俺の問いかけに楓はふるふると首を振り 「まず。シャワー浴びてきて下さい。 その間に用意しますから。はい。起きて。」 すっかり甘々モードが消え去った楓は ダラダラしたがる俺を必死に起き上がらせ バスルームへ押し込むと また パタパタとキッチンへ戻っていく。 シャワーを浴び バスローブを羽織って タオルで頭を拭きながらリビングへ足を向けると 楓が忙しそうに 走り回っていた。 ふと見ると リビングの窓先のデッキに テーブルが出され クロスがかけられている。 ああ。 そういう事か。 カウンター越しにキッチンを覗くと 旨そうな唐揚げに生姜焼き 卵焼きに ほうれん草の胡麻和えなど沢山のおかずが 重箱に詰められていて その横には握りが皿に並んでいる。 楓らしいな。 海を見ながら一緒に弁当が食いたかったのか。 その可愛らしい思考に思わず口元が緩む。 キッチンに入り 俺に気づいた楓の腰に手を回し チュッとキスすると 頬を紅く染めながら はい。と俺に重箱を一つ渡し ニッコリと笑顔を見せた。
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