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「どうしたものかの…」
主上は脇息に、嘆息しつつ、もたれられる。
殿上の間には、しばし沈黙が流れる。
沈黙を破ったのは、先ほどのお喋り3人組のうちの1人。
「恐れながら……」
主上は、脇息から体を起こされた。
「何じゃ?申してみよ」
「はっ。ならば、坂上田村麻呂殿が、適任かと」
「……しかし田村麻呂殿には、かれこれ2年の隠者生活をされて
いるとか…」
「なれど、こちらも一大事。被害が、減ることはございますまい」
「一刻の猶予もありませぬ」
しばしの沈黙の後。
主上は決断なされた。
「仕方あるまい。田村麻呂に頼むしかないの」
御言葉が終わらぬうちに蔵人が現れ、紙と筆が差し出される。
主上は文を、したため始められた。
「これを」
蔵人は手紙を受け取り、消えた。
「うまくいくとよいが」
主上は又もや深く溜息をつかれ、脇息にもたれられた。
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