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少女の願い
「蒼生さんは私と一緒に魔女の世界に来てくれますよね?」
僕は下を向き沈黙を貫く。すすり泣く声が聞こえる。
「お願いですから。私のために生きてくださいよ。仕事で会えなくなるかもしれないですけど、あなたがどこかで生きてさえいれば私はそれでいいんです。毎日あっていろんな話をして、いろんなところに行って笑っていたいんです。あなたが死んだらそれが出来ないじゃないですか。」
僕はようやく口を開く決心をする。僕のことを本気で想ってくれている彼女に、僕が好きな彼女に真剣に向き合わなければならない。
「僕は麻衣といる時間が好きだった。こんなに幸せな日々は今までなかったし、僕のことを好きでいてくれて、とても嬉しかった。たとえそれが恋なんかじゃなくても。今感じている幸せが僕のすべてだ。君は僕がいなくてもうまくやってる行けるよ。」
彼女は僕を見ていた。涙が邪魔をしていても僕を見てくれている。
「『願い事』まだあと一回使えたよね?」
彼女は僕のしようとしていることを、決意を理解したようだ。
「やめてください。そんなことしても嬉しくありません。まだ蒼生さんと話したいんです。」
僕は彼女の願いを無視して大きな声で叫ぶ。
「僕がいなくても麻衣が幸せに暮らせますように。これが僕の最後の願いだ。」
彼女は少し諦めたような顔をし、それから笑った。
「今まで本当にありがとうございました。あなたとの日々は忘れません。」
白い閃光が僕の視界を奪う。視界が晴れたときにはもう彼女はいなかった。
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