少女の願い

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 僕はその日なにもしないで過ごした。その次の日も。彼女のいない日常は退屈でそれ以上の感想はででこなかった。短い時間で彼女はここまで自分の深いところまで来ていたのか。  気がついたら夕方だった。もう少しで絹さんが来るだろう。そしたら自分の何もない人生はこれで終わりだ。もう色々と疲れてしまった。たくさん笑って楽しくて。彼女がいたからこんなに幸せになれた。  インターホンが鳴る。どうやら来たようだ。まあここまで満喫できたから自分としては上出来だ。 「絹さんやっと来ましたね。お待ちしておりました。」 「どちらを選択するか決まったか?」 「はい。僕はここで死にます。一つお願いがあります。」 「なんだ?」 僕は内緒話をするみたいに彼女の耳元で囁いた。彼女は目を見開き、僕に初めて笑った。 「それぐらいなら受けてやる。」 さあいよいよだ。僕はここで死ぬけど、彼女の中では生きていてほしい。こんなの無理な押し付けでしかないのに。  彼女は僕の知らない言葉を唱え始める。少しずつだけど着実に意識が遠のいていった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!