私物泥棒

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犯人が分からないまま、もうすぐ2月。6年生に進級した4月からずっと続いているあの出来事は今も続いている。相変わらず短くなった鉛筆は交換されるし、チビた消しゴムも交換される。1番驚いたのは、交通安全教室の日に、母親と共有しているママチャリで学校に来たら、いつの間にかマウンテンバイクに替わっていた事だった。交通安全のビデオを観て、実際に自転車で街中を走ろうとしたところで発覚した。流石にこれには母親も激怒し、盗難届を出したけど未だに見付かってない。こんな事がいつまで続くんだろう。中学生になっても続いたらどうしよう。僕はもう学校に行きたくなくなっていたが、もうすぐ卒業だと思うとこんな事で登校拒否するのは勿体ないと思って通った。今日は何が交換される?学校に居る時はそれが怖くて、自分の席に近付く人に威嚇していた。多分僕は壊れていたのだろう。もはや誰もが犯人に見えていた。 そして、とうとう僕がブチギレた事件が起きた。 家庭科の実習を終えて、調理室から教室に戻って来たら、ランドセルが新品になっていた。筆箱に続き、僕にとっては大事な物だった。僕のランドセルは親戚からのお下がりで、シールがベダベタ貼ってあるちょっとボロボロのランドセルだったけど、卒業まで大事に背負いたいと思っていた。僕の後には、また別の親戚の手に渡る筈だったのに。犯人はどうして僕の大事な物を奪っていくの?僕は膝から崩れ落ちた。悲しい。悲しすぎる。 そんな僕に、クラスのガキ大将が言った。 「小6なのにピカピカのランドセル。だっせー!1年みてぇ!ピカピカの、1年生♪」 その一言で僕はキレた。うるさい!お前に僕の苦悩が分かるか!どうして僕だけ!!うぁぁぁぁぁん!!と、泣きながら僕は相手をグーで殴り続けた。望んでないのに勝手に私物が新品になる苦悩が分かるのかよ!相手は最初殴られ続けてたが、やがて殴り返してきた。教室はパニックになり、誰かが先生を呼んできて、引き離されるまで僕らは喧嘩をしていた。 僕も相手も親を呼ばれ、病院で診察を受けた。2人共顔が腫れていた。 その日以来、私物が新品に替わる事はなくなった。 最後に入れ替わったランドセルは恥ずかしいので、残りの小学校生活はリュックサックで通った。喧嘩をした相手とは、互いに親と菓子折を持っていって謝った。犯人は未だに分からない。    
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