元旦に。

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元旦に。

 平成最後の正月、彼女は大阪にある四天王寺に来ていた。 凍てつくような寒さの中、彼女は自転車と電車を乗り継ぎ、そこに行ったのだった。 「1年の始まりは元旦にあり」 そう、よく言うように、ここは元旦には相応しい場所だと彼女は感じていた。 5階分の階段を上がり、五重塔の上で四天王寺の鐘の音を聞き、心を落ち着かせた。そして、いま上ってきた階段を右膝を庇いながら、ゆっくりと降りていった。彼女は「昨年」と言っても昨日までは「今年」だったが、10月に膝の手術をしたのだった。 納経所で御朱印を頂き、その足でまた電車に乗った。 世間は元旦でどこも休みだというのに、彼女は仕事場へと向かった。 そう、彼女は郵便局で短期アルバイトをしているのである。1年の始まりを告げる年賀状を届けるために、分けているのである。 今日、珍しく定時で上がることの出来た彼女は、夕暮れ時の太陽を見つめながら、 「綺麗だな」 そう一言呟き、寒さに鼻を赤らめ、自転車を一歩踏み込み、帰路についた。
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