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彼女になりたい
彼女は自由だ。
春の麗らかな陽射しの中、呑気に毛繕いをしている。一日の始まりは毛繕い、「身だしなみが大切なのよ」とでも言いたそうに、ペロペロ舐めている。
4月も中半になり、桜の花も葉桜になりつつある。そんなに暖かな日に忙しいのは似合わない。彼女はすました顔で、尻尾の先までピンと立てて、背筋を伸ばして歩いてゆく。近づけば離れていき、離れればすり寄ってくる。世界は私のためにあると言いたそうに振り向く彼女。彼女の気まぐれさに心を奪われる人は少なくないだろう。私もその一人で、嫌いにはなれない。
厳しい世の中を生きてきた彼女たちの立派な知恵である。そんな彼女だからこそ魅力であり、引き寄せらせるのであろう。
それは私の好きな彼とは大違い。決めた人には忠実で誠実であり、「裏切る」という言葉を知らない彼。どこまでも着いてきてるれる彼。私は彼に何度助けられたか分からない。悲しい時も寂しい時も、嬉しい時もいつもそばに居てくれる彼のことが本当に好きだ。
彼女とはまた違った魅力がある。
自由を求め厳しい世界の中を生き抜く彼女。
主人のためなら身を尽くして使える彼。
私は彼らのように何かに夢中になれるだろうか。
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