新しい出発。

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日本に帰る飛行機の出る時間を、空港で待っていた。 愛は母親と来ていたが、樹の本選前日、愛の結果が出ると一足先に帰って行った。 樹に何度もお願いを繰り返して。 「愛、後、30分位で中に入れるよ。まだ買うの?」 空港のお土産売り場で愛はお土産を選ぶ。 「ね?これ何?箱の形が可愛い。」 「クッキーかな?先生たちのは買ったよね?」 「勇人にだよ。橋場さんにもね。」 「勇にはでっかいのにしようよ。」 「じゃあ、これ橋場さんで、うちにも樹んちも3個ね?勇には樹が選んで?」 「うーん、じゃあ、これ!多めに買うんだよね?あ、これ、愛、好きそう。 アーモンドクッキー。買うか?」 「買う!」 「ほら、愛急ぐよ?」 「ちょっと、荷物が…。」 お土産を片手に沢山、持っていた。 「はい。これ持つから、ちゃんと杖持って。で、こっちの手はこう!」 お土産を取られて、杖をしっかり使う様に指導され、残った手を繋がれる。 「なんか偉そう…。」 と、愛は呟いた。 「いいでしょ。愛の言う通り、仇は取ったんだし。 どうせ僕は愛の言う通りになるんだし。逆らえない。一生…。」 樹が歩きながら答えた。 「一生?」 「うん、一生。」 笑いながら、愛は樹に繋がれた手をぎゅっと握る。 「ずっとね?でも、可愛い子に声かけられたでしょ?ホテル出るとき。」 「うん、日本語上手だった。可愛い子かどうかは分かんないな。」 「ビューティフルガールって、タクシーの運転士さんが言ってたもん。」 「それ……愛の事だよ。降りる時も言ってた。僕には愛が一番だしね。 外国人、押し強そうだしハラハラするから、ひとりで来ないでね?」 「いいよ?だって、ずっと一緒でしょ?」 「そう、一生ね?覚悟してね?愛。」 「それはこっちのセリフですぅー。」 言い合いながら飛行機に乗った。 帰ったら、きっとまた2人共忙しくなる。 でも、もう辛くない、寂しくない。 愛には音がある…大好きな音だ。 会いたい時にいつでも会える、優しい彼氏が出来た。 幼馴染がいる、理解してくれる大事な友達。 「ふふーん…あーいと、ゆうきだけーが、ふーんふふんふーんふーん。」 鼻唄を歌う。 「愛…周りに聞こえてるよ?」 くすくすと大好きな樹が横で笑った。 ーー完ーー
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